松尾院(最上三十三観音第9番札所)
最上三十三観音第9番札所である金峰山松尾院(松尾山観音)は、山形県山形市蔵王半郷にあります。
寺伝によると、和銅元(708)年に行基が巡錫の折、山中で松の木の下に野宿したところ、桂の古木に留まった弥陀三尊(阿弥陀・観世音・勢至菩薩)を感得し、山中にあった桂の大木で三尊を彫刻して堂宇を建立したことに始まると伝わります。また、山号の松尾山も、松の木の下で弥陀三尊を感得したことによるものとされています。
延文元(1356)年には斯波兼頼(最上氏の祖)が国土安穏と武運長久を祈願して山地を寄進し境内を整備しています。
ところが、応永年間(1394~1428年)に盗賊が山内より三尊を盗み、半郷から成沢(半郷から約4㌔くらいの場所)まできたが豪雨のため附近一帯が洪水となり、仏罰を恐れた盗賊たちは三尊を途中に残して逃走しました。この時、観世音と勢至菩薩は半郷の里人が新たに建立した堂宇に安置されましたが、阿弥陀如来は洪水とともに姿を消したと伝わります。
観音堂に続く道は舗装されているものの道幅が狭いため、観音堂入口付近にある鳥居の奥に駐車して徒歩で参拝することをおすすめします。
道中には天神様と思しき石仏があります(初めて見た)。
観音堂入口に差し掛かったあたりから水の音が聞こえていましたが、3分ほど歩くと沢があり橋がかかっています。どうやらパワースポットのようで、看板が立っていました。看板の指示に従い、橋の上で深呼吸してきました(笑)
橋を過ぎてすぐに石段が見えてきます。雨上がりだったので滑らないよう恐る恐る進みます。
石段を登りきると観音堂が見えてきます。太鼓橋という石橋が架けられており、雨の日は滑るとの注意書きがあります(この後渡ろうとして見事に滑りました…。)。
松尾院の観音堂は、室町時代末期の建立で国指定重要文化財になっています。
この日は朝一での参拝で、私が参拝者第一号だったようです。扉が閉まっていましたが、鍵が開けられていたので、扉を開け、堂内の電気をつけます。
堂内が明るくなった瞬間、暗闇のなかから観音菩薩と勢至菩薩の巨大な立像が姿を現し、思わず「おお…」と声が漏れ、その迫力にしばし呆然と立ち尽くしてしまいました。
まさかこのような素晴らしい仏像と巡り合えるとは…、感激のあまり目に涙を浮かべてしばらく見入っていました。
観音菩薩は像高3.26mの桂材の一木造で両手首の下端、足などが失われています。勢至菩薩は像高3.03mでこちらも桂材の一木造で、右手をあげ左手は垂下していますが、手先と足などが失われています。
両像とも平安時代中期(11世紀)の作で、同じ地方仏師の手によるものと推定されています。同時期の平安仏が最上三十三観音第3番札所吉祥院にもあり、お顔や佇まいが似ているように思いました。
境内には他にも弁財天や水神を祀る祠、不動明王の石仏などがあります。
御朱印は観音堂入口付近にある納経所でいただきます。最上三十三観音の御朱印のほか、観音堂入口にある蔵王大権現(神社)の御朱印もいただけるようです。
他の最上三十三観音札所については、こちら。
【所在地】山形県山形市蔵王半郷1600-4
【御詠歌】このかみは いくよへぬらん たよりをば ちとせをここに まつのをのやま
【本尊】聖観世音菩薩・勢至菩薩
【駐車場】あり