萬蔵稲荷神社~旧羽州街道の千本鳥居のお稲荷さん~
お稲荷さんと言えば、お稲荷さんの総本社である京都伏見稲荷大社や青森県の高山稲荷神社の千本鳥居に代表されるような、朱色の鳥居がたくさんある光景を思い浮かべる方も多いかと思います。
ちなみに、千本鳥居というのは実際に千本あるということではなく、数が多いという意味です。
さて、今回は白石市にあるお稲荷さん、萬蔵稲荷神社をご紹介します。
宮城県白石市は、伊達氏の重臣片倉氏の城下町で、白石城や片倉家ゆかりのお寺などが観光地として有名です。今回ご紹介する萬蔵稲荷神社は、県民にはあまり知られていませんが、素晴らしい神社です。
萬蔵稲荷神社の付近には、飛不動尊という場所もあります。そちらについては、また次回の記事でご紹介します。
創建の由緒
社伝では、以下のような由緒が伝えられています。
鎌倉時代からの金剛院修験の家柄である熊谷家(現宮司家)に生まれた萬蔵は、小坂峠を中心に馬方をして暮らしていました。
ある時、峠の頂上で旅に疲れた老僧に一食を求められ、老僧を馬に乗せ我が家にて心からのもてなしをしましたが、翌朝早く老僧は姿を消してしまいます。萬蔵が昨日の峠にさしかかると馬のいななきが聞こえたので見てみると、昨夜の旅僧が立っており、「私は稲荷神社の化身である。昨夜は殊勝な心掛けであった。」と礼を述べ馬三頭を与えられました。萬蔵は、この馬を金に代えて、天明5(1785)年頃に稲荷社(旧社名は賀良明貴(がらみき)神社)を建立しました。
萬蔵はその後、自らも修行し、出羽三山から「大阿闇梨金剛院祐観」の院号を受け、没後は即身仏になったと伝えられています。神社はいつしか萬蔵の名前を含めて、「萬蔵稲荷様」と崇め称えられるようになり、明治2(1869)年に萬蔵稲荷神社と改称されます。明治42(1909)年には近隣16社11の祭神を合祀し、村社となりました。
境内散策
萬蔵稲荷神社は白石市と福島県との県境である小坂峠に位置します。
市街地から国道113号線を通り、七ヶ宿方面に向かいます。途中、県道46号線(白石国見線)に入りしばらく進むと、鳥居が見えてくるので、鳥居前のスペースに車を停めます。
参道の鳥居は企業や個人から奉納されたもので、数の多さが信仰の高さを物語っています。
森の中に佇む鮮やかな朱色の鳥居をくぐっていきます。この日は35度を超える真夏日でしたが、参道はひんやりとして涼しかったです。
昔から人々から崇敬されている神社だけあり、朽ち果てて根本部分のみとなった鳥居もありました。
鳥居のある参道を10分ほど進むと社殿が見えてきます。
境内は綺麗に整備されており、とても気持ち良く参拝できました。
御朱印は本殿内にある授与所でいただけます。現在は新型コロナウイルス感染症予防対策として書置きでの対応です。
帰りも同じ参道を通ります。噂では、行きと帰りの鳥居の数が違うことがあるそうで、お狐様がいたずらすると言われています。私が数えた限りでは、行きと帰りはどちらも同じ120基でした(朽ちた鳥居は数に含めていません)。
行きは気づきませんでしたが、さらに奥にも鳥居がありました。この鳥居を含めて120基です。
萬蔵稲荷神社は市街地から車で1時間弱ほどかかりますが、静寂の中に佇む鳥居がとても良い雰囲気を出しています。旧羽州街道沿いにあり、道中には道祖神や庚申塔などの石碑が数多くあります。車通りも少なく、車を停めてじっくり見ることができるため、石碑好きにとって嬉しい場所です。
さて、ここから峠を越えて福島方面に抜けることもできますが、この後は同じく白石市にある飛不動尊に向かいました。次回は飛不動尊です。
〇萬蔵稲荷神社
所在地:宮城県白石市小原馬頭山6
駐車場:あり(鳥居前)
御朱印:あり(初穂料300円)